NEATダイエットとは
ダイエットでいちばん大切なのは、足し算と引き算がきちんとできること。頭でわかっていても実は難しいのがコレです。

ダイエットを成功させるためには、体に入ってくる摂取カロリーと体から出ていく消費カロリーをコントロールすることが大切です。消費カロリーよりも摂取カロリーが上回れば太り、消費カロリーよりも摂取カロリーが下回れば痩せるだけのことなのです。

小学生で習うはずの足し算・引き算が大人でも結構難しいのです。なぜなら、たいていの人は自分が食べたカロリー量を過小評価して、自分が消費したカロリー量を過大評価するからです。→消費カロリーの一覧

たとえば、あなたがダイエットのためにウォーキングを始めたとしましょう。汗を流して歩くのは気分転換にもなって気持ちが良いです。きっといい運動になったと思うことでしょう。

しかし、その後、これだけ動いたから、ダイエット中とはいえビールの1杯か2杯くらい飲んでも大丈夫なんていう誘惑にかられてしまうことはありませんか?ビールじゃなかったとしてもお菓子でも一緒のことです。

実はその判断が間違いのもとで、ビール中ジョッキ1杯分のカロリーは約200キロカロリーなので、2杯で約400キロカロリーにもなります。

これはウォーキングで消費したエネルギーを軽く上回ってしまうカロリー量です。→ウォーキングダイエットの詳しい方法

このようにウォーキングの度にビールを飲んでいたとすれば、その余分なエネルギーはどんどん脂肪として蓄積されるでしょう。だから、こういう状況が続けば、ダイエットのために始めた運動によって、かえって太るということになってしまうのです。

でも決してビールやお菓子をガマンしようということではありません。当然ご褒美というのも必要なときはあります。ダイエットの足し算・引き算は間違えやすくできているということをわかるだけでも変化があると思います。

ダイエットを経験したことのある人なら誰でも「飲もうか」「食べようか」と迷ったことがあると思います。そこでちょっとくらいなら大丈夫だろうとか今日はたくさん体を動かしたしと、自分の都合の良いほうへと考えてしまいがちです。もう十分エネルギーを摂取しているにもかかわらず、自分に都合のいい足し算や引き算をすることによって食べようという判断を下そうとするのです。

つまり、食べたものに関しては少なめに見積もり、運動で動いた量は多めに見積もる。この傾向が強いために、たとえ自分の頭の中ではバランスがとれているつもりでいても、摂取カロリーが消費カロリーを大きく上回ることとなり、どんどん太ってしまうのです。


食べても太りにくい人との差は、普段の活動量にあります。移動の際にエレベーターより階段を選んだり、こまめに動く人は、エネルギー消費量が多いのです。→生活習慣を改善して痩せる方法

つまり、ダイエット成功の近道は基礎代謝を上げることではなく、日頃からちょこまかと動いて、活動代謝を上げることだったのです。
ちょっと動いたぐらいで変わるわけがないと思うかもしれませんが、これが変わるんです。

専門的な用語では「NEAT(nonexercise activity thermogenesis)」(ニート)といいますが、スポーツなど意識的に行う運動ではない、日常の活動で消費される代謝熱量のことです。

たとえば、仕事や通勤、家事などの日常生活で、立ったり座ったり、何かを持ち上げたり下ろしたり、小走りになったりという運動とは言えないような軽い動作をする機会があるはずです。NEATとは、そういう動作によって消費されるエネルギーのことを指します。

いま、ダイエット界では、このNEATの重要性が注目されています。
ある研究では、やせ気味の人と肥満気味の人の行動を10日間観察したところ、肥満気味の人はやせ気味の人よりも座っている時間が1日平均2.5時間も長く、歩行時間が少ないことがわかりました。つまり、日頃、NEATによって消費されるエネルギーの大きさの違いがそのまま肥満になる傾向に結びついているというわけです。

まわりをみて何事にも積極的かつ行動的で、手を動かしたり足を運んだりする労を惜しまない人にはスリムな人が多い気もします。逆に何をするにも腰が重く、体を動かすことをおっくうがる人には太っている人が多い気がします。

このような1つの作業をこなすために体を動かす頻度がチリツモになって大きな消費カロリーの差になっていることは間違いありません。

段階的に日常生活の行動を考えるようにして、たとえば座るよりも立つ、立つよりも足を動かす、足を動かすよりも歩く、歩くよりも小走りに走る。このような毎日の生活の心がけが大きな差につながるというわけです。

通勤の車内では座るよりも立つことを心がけて、余裕があればつま先立ちをすればいいでしょう。オフィスでの用事はメールではなく足を運んだり、ゴミが落ちていたら率先して拾って捨てたりなどできることはたくさんあります。

家でテレビを見るときは寝転がって見るよりも座って見る。座って見るよりも立って見る。立って見るよりもダンベルなどで体を動かしながら見るのが理想的ということです。→ダンベルダイエットの実践方法

日常生活でよく動いて活動する習慣を身につければ、NEATがアップするのはもちろん、それによって基礎代謝が高く維持できることも分かっています。とにかくフットワークを軽くして、意識的に動き回ってみたり、いつもの活動に少し負荷をプラスしてみたりするのが手軽でおすすめです。

これは何にでも応用が可能なので幅広く使えるチャンスがあると思います。
活動代謝を増やす方法は決して難しいことではありません。たとえば、床をぞうきんがけする。愛犬の散歩に出かけてウォーキング。庭木の手入れに大工仕事。エスカレーターではなく階段を使う。

家の中であったり、街中でもすべてがトレーニング場所だと思ってください。スーパーでカートを押すのではなくかごを持ち歩くとか、移動は車ではなくて徒歩を基本とするなどです。

こうして日常的にちょこまかと動くクセをつけることで、太りにくい体ができ上がるというわけです。

準備するものは何もいらないという手軽さで、まさにあなたの気持ちだけです。→基礎代謝とダイエットの密接な関わり


ちなみにちょっと具体的な数字を出してみましょう。
いまは便利な世の中になっているので携帯電話やスマホをポケットから出すだけでだいたいの用が済みますし、テレビやエアコン、扇風機などはほとんどがリモコンつきで、いちいち立って体を動かさなくてもよくなっています。

でも、昔は電話のある部屋まで行ってダイヤルしたり、テレビのチャンネルを変えるのにも扇風機の風の強さを変えるのにも、そこまで行かなければなりませんでした。

ちょっと地味ですが消費カロリーがどれくらい違うか考えてみました。

席を立って電話やテレビ、扇風機などのところへ行くまでの距離を、ざっと5mとした時に、行って、戻ってなので往復10m歩くとします。そして、電話をしたりチャンネルを変えたりする機会が合計20回あったとしましょう。10m×20回で、1日200m歩いていたことになります。

すると、200×365日=73000、つまり、1年で73km歩く計算になります。これを1分間に80mの速さで歩いたとすると、約15時間かかります。

さらに、歩くことで1時間に消費するエネルギーを少なく見積もって200kcalくらいとすると、15時間でだいたい3000kcalを消費することになります。このカロリーが多いか少ないかは人によりますが、何もしないのとちょっとそこまで動くことを意識するだけで消費カロリーが増えます。

電話とリモコンだけの例でこんなに違うことを考えると、世の中が便利になるほどに消費カロリーが少なくなっている現状がわかると思います。

ネットで買い物を皆さんはしていますか?これは便利で家にいれば買った商品が届きます。それまではお店まで足を運んで買ってそれを家まで持ち帰るという行動がありましたが、それもなくなりつつあります。


このように、現代では飽食によりからだに入るエネルギーが増えているのに、出て行く消費エネルギーは世の中が便利になるにつれて加速度的に減り続けています。摂取エネルギー>消費エネルギーとなる条件ばかりがそろっているのです。この環境で普通に何も考えずに生活をしていると太ってしまうのが当たり前の結果なのです。→環境が肥満を作っていた

ダイエットを成功させるには、日常をどう意識的に過ごせるかが重要になってきます。日常のすべての行動がダイエットに結びつくというイメージですべてを考えるようにしましょう。

ダイエットは運動よりも活動をすることのほうが重要という考え方はお分かり頂けたと思います。運動によって消費されるカロリーはもともとわずかなものです。多くの人は、忙しい日常の中から運動をするために時間を捻出しているのでストレスがたまっています。

それよりも、日常生活の中で活動レベルを上げたほうがストレスもたまらないのでリバウンドしにくくなります。たとえその都度費やされるカロリーは微々たるものでも、毎日回数が重なれば、チリツモ効果によってばかにできないカロリー消費になっていくのです。 →ストレスを味方につけて痩せる方法


エレベーターと階段のふたつがあるときにどちらを選びますか?
少しでもダイエットのことが頭をかすめ、階段という選択ができたなら、あなたはきっと大丈夫です。着実に活動によるダイエットを重ねていくことができるでしょう。

食べることに関しても同じで日記などに記録したりして自分が置かれた状況を把握できれば、自分が食べすぎていないかどうか、食べていいのかどうかに気づく力を持つことができます。→ダイエット日記をつけて生活を見直そう

この気づく力がついてくれば、勝手な思い込みや希望的観測ではなく、冷静かつ厳しい目で体のエネルギーの出入りを判断できるようになってきます。

そして、この気づく力が向上するかどうかは、その人の知性、つまり頭のよさにかかっているのではないかと思っています。

頭のいい人の共通点は自分のことをよく分析していて、自分の置かれた立場をよく心得ています。それで、自分が何をすべきかにちゃんと気づいているからこそ、よりよい結果を出せるんです。

ダイエットもそれと同じです。自分の体のエネルギーの出入りがどういう状況なのかに気づき、食べるか食べないかの判断を冷静に下せるからこそ成功するのです。大切なのは、自分の状況に気づき、知性的な判断を下すこと。目の前の欲求に振り回されないよう、頭でしっかり考え、脳を働かせて判断をすることなのです。

ダイエットとはからだではなくて頭でするものです。人間なので当然ラクなほうへと流されてしまいがちですが、ちょっと待てよと踏みとどまれる意識があるかどうかがダイエット成功の鍵を握っているのです。



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